税効果会計を適用するメリット

(※)過去のブログを復活させたものです。画像はイメージです。

税効果会計を適用するメリット

 

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。

「税効果会計」は、「金融商品会計」「退職給付会計」と並んでもっとも難解な会計基準のひとつです。
上場企業であれば「税効果会計」を適用しなければなりませんが、中小企業は必ずしもそうではありません。

日本税理士会連合会や日本公認会計士協会などが連名で公表している「中小企業の会計に関する指針」には「税効果会計」も記載されていますが、この指針は中小企業に強制的に適用されるわけではありません。

とても難解なうえに強制でもないので、「税効果会計」に関心がある中小企業経営者は多くないかもしれません。
そこで、「税効果会計」を適用するとなにかメリットがあるのか考えてみます。

とても長くなるので、結論を先に言っておきます。
メリットはあります!!!

「税効果会計」がなぜ生まれたかというと、「収益」と「費用」(税務では「益金」と「損金」)をいつ計上するかについて、「会計」と「税務」で考えが違うことがあるため、「会計」側がその違いをなんとか「調整」しなければならなかったからです。

(専門家のみなさん、ここではP/L主義で書きます。そっちのほうがわかりやすいので。)

以下でもう少し詳しく説明させていただきます。

まず、「会計」と「税務」がそもそもなんなのかについて大雑把に説明します。

「会計」とは、「一般に公正妥当と認められた会計の基準」のことです。企業の財政状態や経営成績を忠実に反映した財務諸表をつくるためのものです。

「税務」とは、基本的には「会計」にしたがいながら、公平な課税の観点から一部「会計」と異なる処理を取り入れたものです。しかし、法人税などの税金を計算するためのものであるため、必ずしも企業の財政状態や経営成績を忠実に反映はしません。

「会計」は「会社の業績と財政状態をきちんと表そう!」という発想で作られていますが、「税務」は「それもそうだが、それでは税金が取りにくくなる。じゃなかった、不公平になるよね?」と待ったをかけます。

「会計」はとても保守的なので、損失が出ると予想される場合はどんどん「費用」にしてしまいます。ところが、「税務」は損失が出ることが確定するまで「損金」にしません。(損失を出すほど所得が減ってしまい、したがって税金も減ってしまいます。)

損失を出しても生き残れる大企業は積極的に損失を出せるかもしれませんが、損失を出すと生き残れない中小企業はなかなか損失を出せません。だから、「税務」はそれを不公平だというのです。

「会計」と「税務」は混同されがちですが、実は上記のような違いがあるのです。

となると、「会計」と「税務」でそれぞれ異なる「損益計算書」「貸借対照表」ができそうですね。でも、さすがにそれだと手間になってしまうので、「会計」と「税務」の違いは「別表4」(法人税申告書の一部)で調整するだけでよいことになっています。

「別表4」での調整はあくまで「税務」側の処理です。

これに対して、「会計」側が行う対抗措置が「税効果会計」になります。

数字を使って例示しましょう。

「会計」では将来予想される損失を100計上し、税引前当期純利益が100になったとします。

「税務」ではこの損失100は「損金」にはならないため、別表4で加算して「課税所得」は200になった(税引前当期純利益100+損失100)とします。

とすると、「別表4」は以下のようになります。

税引前当期純利益 100

損失加算     100

課税所得     200

税率が住民税と事業税もひっくるめて40%だとすると、法人税等は80(課税所得200×40%)になります。

したがって、損益計算書(抜粋)は以下のようになります。

税引前当期純利益 100(A)

法人税等      80(B)

税引後当期純利益  20

ここで、(B)/(A)は80%になり、税金を80%も負担しているように見えてしまいます。税率は40%なのに、さらに40%増税された気分になります。

これって明らかに変ですよね?

でも、「税務」はこの損失を永久に認めないわけではなく、確定した期で認めてくれるわけです。そうなると、その期では全く逆のことが起こります。

つまり、確定した期の課税所得が100減らされますので、「別表4」は以下のようになります。(税引前当期純利益は100とします。)

「別表4」

税引前当期純利益 100

損失認容減算  ▲100

課税所得       0

課税所得が0なので、法人税等も0になります。

すると「損益計算書(抜粋)」は以下のようになります。

「損益計算書(抜粋)」

税引前当期純利益 100(A)

法人税等       0(B)

税引後当期純利益 100

(B)/(A)は0%になり、まったく法人税等を負担していないことになります。税率は40%なのに、40%減税されて0%になったかのようです。

でも、上記の「会計」と「税務」の違いは「損失(損金)」をいつ認めるかということだけです。

だから、「会計」は「税務」が将来「損失(損金)」を認めてくれたときの法人税等の「減税効果」(本当は減税ではありません)を前もって計上しておけばいいじゃないかと考えるわけです。

そうすると、最初の「損益計算書」は以下のようになります。

税引前当期純利益 100(A)

法人税等      80(B)

法人税等調整額  ▲40(C)←将来の「減税効果」

税引後当期純利益  60

((B)+(C))/(A)は40%になって、見事に「調整」されました。

また、後の「損益計算書」は以下のようになります。

税引前当期純利益 100(A)

法人税等       0(B)

法人税等調整額   40(C)←「減税効果」の取り消し

税引後当期純利益  60

やはり、((B)+(C))/(A)は40%になって、見事に「調整」されます。

「税効果会計」を適用すると、企業が本来負担すべき税金がただしく「損益計算書」に表示されますし、税引後当期純利益も平準化されます。

業績は安定していた方が銀行からの評価もよくなりませんか?

このように健全な「会計」を志している中小企業であれば、「税効果会計」を適用することは大きなメリットになります。

ぜひ、「税効果会計」の適用をご検討ください。

【連絡先】
JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

 

お問い合わせは以下のフォームからも行えます。

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