リース資産のオンバランスよりもこわい?「追徴課税引当金」
※以前のエントリ―を復活させたものです。
リース資産のオンバランスよりもこわい?「追徴課税引当金」
名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。
日本でもすべてのリース資産をオンバランス(貸借対照表にのせること)する会計基準(以下、新基準)の開発が始まりました。現在のリース会計基準では、一部のリースを除き、リース資産は貸借対照表にはあらわれず、支払われたリース料だけが「費用」として損益計算書にあらわれます。ところが、新基準ではすべてのリース資産が貸借対照表にのせられてしまい、固定資産と同じように減価償却されることになります。また、リース料の支払いは、リース負債(リース資産とともに貸借対照表にのせられる)の返済として扱われます。
アメリカやEUではすでに2019年度から新基準が適用されています。日本の企業でも、アメリカの会計基準(USGAAP)やEUの会計基準(IFRS)を使っていれば、同様に2019年度から新基準を適用することになります。
この新基準が適用されると、貸借対照表に大きな影響を与えるでしょうが(損益インパクトはそれほどない。リース料が減価償却費にかわるなど見え方が変わるだけ)、日本企業にはまだ数年先の話になりそうです。
ところがIFRSで2019年度から適用される会計基準でもうひとつ大きなものがあります。IFRIC23号「法人所得税の処理に関する不確実性」です。
この会計基準をものすごく簡単に言うと、「税務調査に入られたら、ふつー、所得漏れを指摘されて追徴課税されちゃうよね?」と思われる税務上の処理をもし行っているのであれば、「追徴課税されそうな金額を引き当てておこうね!」というものです。
実は、アメリカではすでに2007年からこのような会計基準が適用されています。
例えば、企業がある収入100を得ているが、これを所得として申告しないという「税務ポジション」(税務上の立場、考え方といった程度の意味)をとっていたとします。(それが良いか悪いかはここでは問いません。)
もし税務調査が入ったら、この収入100の所得漏れを指摘される確率が50%を超えるとします。そして、追徴課税されそうな金額が利息なども含めて50であれば、これを引き当てなければなりません。いわば、「追徴課税引当金」です。(引当額は、実際は未払法人税等に含められます。)
それだけではなくて、そのような「税務ポジション」がどのくらいあるのかも「注記」(貸借対照表と損益計算書のつくり方や内容に関する注意書き)に書かなくてはなりません。
アメリカがこの会計基準を開発したとき、私はとても正気の沙汰とは思えませんでした。だって、「税務当局につっこれまそうな情報」を自ら公表してしまうわけですから。
この会計基準が日本でも開発されるかは今のところよくわかりません。もし、そうなったら少なからず論争がおきるでしょう。とはいえ、日本企業はそうそう積極的な「税務ポジション」をとっていないでしょうから、大した影響もないのかもしれません。
IFRSを使っている日本企業も2019年度からこの会計基準にしたがわないといけないので、今後の決算発表が楽しみです。
【連絡先】
JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com
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