新しい収益認識会計基準の読み方

収益認識

 

(注意)

このブログでは主に財務諸表を読む側が知っておくべきことを説明しています。
したがって、収益認識の5ステップに関する詳細な説明は省くこと、必ずしも正確でない部分もあることをご了承ください。

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 目次
【収益認識に関する会計基準とはなにか?】
【なぜできたのか?】
【なにに適用されるのか?】
【なにが変わるのか?】
【いつから適用されるのか?】
【読む側はどうすればよいのか?】

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【収益認識に関する会計基準とはなにか?】

収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号。以下、本会計基準)は収益に関する会計処理及び開示について定めることを目的とした会計基準です。
ここでいう収益という用語は本会計基準では明確に定義されていませんが、商品等の販売やサービスの提供といった本業から得られる収益(売上高)と考えてかまいません。

本会計基準では、収益は以下の5ステップにより、測定・認識されることになりました。

ステップ1:顧客との契約を識別する
ステップ2:契約における履行義務を識別する
ステップ3:取引価格を算定する
ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する
ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する

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【なぜできたのか?】

収益認識に関する会計処理は、一般的な取引に関しては企業会計原則・同注解、工事契約やソフトウェア取引などに関しては個別の会計基準で定められていましたが、どんな取引に対しても適用される包括的な会計基準はありませんでした。

とはいえ、収益は実現主義の原則にもとづき、基本的には商品等の出荷時やサービスの提供時に認識することとされ、特に大きな問題もなくその状態が長らく続いてきたわけです。
IFRSやUSGAAPにも収益認識に関する会計基準はありましたが、やはり包括的なものではありませんでした。

ところが、IASBは2014年5月にIFRS15号「顧客との契約から生じる収益」という収益認識に関する包括的な会計基準を公表しました。FASBも同時期にほぼ同一の会計基準を公表しています。

そこで、日本でもこれらの会計基準を参考にして収益認識に関する包括的な会計基準を開発することになり、2018年3月に本会計基準が公表されました。

収益認識に関して包括的な会計基準を定めること、国際的な会計基準との収斂を図ることが大きな目的だと言えます。

【参考】
収益に関する会計処理は企業会計原則の「第二 損益計算書原則 三のB」に定めがあり、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したもの」に限って認識することになっていました。
同注解の注6では委託販売、試用販売、予約販売、割賦販売等の特殊な販売契約による売上収益の実現の基準について定められています。
実現主義の原則とは、財貨又はサービスの移転とそれに対する現金又は現金等価物を取得したときに収益を認識することをいいます。
ただし、同注解の注7では長期の請負工事について、工事完成基準と工事進行基準の選択適用を認めています。
さらに工事契約やソフトウェアの販売などについては以下のように個別の会計基準が定められていましたが、本会計基準の公表に当たり廃止されています。

・企業会計基準第15 号「工事契約に関する会計基準」
・企業会計基準適用指針第18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」
・実務対応報告第17 号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱

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【なにに適用されるのか?】

本会計基準は「顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示」に適用されます。
より具体的に言うと、企業の本業である商品等の販売やサービスの提供から生じる収益に対して適用されます。
金融商品やリース取引など特殊な取引で個別の会計基準が定められているものは適用範囲から除外されますが、それ以外の取引から生じる収益(工事契約やソフトウェア取引を含みます)に関してはすべて本会計基準を適用しなければなりません。

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【なにが変わるのか?】

①収益の認識タイミングが変わる
従来は商品等の販売であれば出荷時点、サービスであれば完了時点で収益を認識するのが通常でした。
本会基準では収益は「履行義務を充足した時に又は充足するにつれて認識する」ことになります。
履行義務とは財又はサービスを顧客に移転する約束のことです。一つの契約の中に一つ又はそれ以上が含まれることがあります。(機械の販売、機械の据え付けなど)
企業はまず履行義務が「一定の期間にわたり充足されるものか」を判定します。
YESであれば、進捗率を見積もって収益を一定の期間にわたり認識します。
NOであれば、収益を「一時点で充足する」ものとして履行義務を充足した時にまとめて収益を認識します。

履行義務を充足したかどうかは財やサービスに対する支配が顧客に移転したかどうかで判定されますので、従来の基準によらず、一つ一つの取引についてどの時点で支配が移転したのかどうかを注意深く決定しなければなりません。
簡単に言うと、企業は従来のように必ずしも商品等の出荷時点やサービスの完了時点で収益を認識するとは限らないということです。
もちろん、従来と認識タイミングが結果的には異ならない可能性もあります。

②収益の金額が変わる
本会計基準による収益の金額の測定は履行義務に配分された契約の取引価格に基づいて行われます。
取引価格の履行義務への配分は履行義務の独立販売価格にもとづいて行われるため、契約に定められた価格と同じになるとは限りません。
契約では値引きなどにより低い価格がつけられたり、極端な場合は無料となっている履行義務であっても、独立して販売する場合の価格にもとづいて契約全体の取引価格が配分されることになります。

したがって、従来、契約に定められたとおりの価格で収益を測定していた場合、本会計基準適用後は収益の金額が異なってくる可能性があります。
また、売上は従来は基本的には総額で表示されていましたが、代理人として第三者間の取引を仲介するだけの立場で行った取引については純額で表示されるため、収益の金額は大きく異なってきます。(利益の金額は大きく変わりません。)

③収益の性質が変わる
収益は実現主義の原則によって認識されていたため、収益の金額は客観的でかたいものでした。その後に予想される値引きや割り戻し、返品などは事後的に認識されたり、売上高以外の科目(費用や引当金など)で処理されることもありました。

ところが、本会計基準においては変動対価(将来の値引きや割り戻しなど)や将来の返品なども収益の測定(金額を決定すること)において考慮することになっています。

変動対価は将来の不確実性を考慮して見積もられるため、収益にも結果的に見積りの要素が含まれることになります。したがって、収益の金額は従来とその性質が異なってくることに注意が必要です。

④注記が充実する
本会計基準では重要な会計方針の注記、収益認識に関する注記をしなければなりません。
重要な会計方針では主な履行義務の内容、履行義務を充足する通常の時点などを注記します。
収益認識に関する注記では企業が行った5ステップによる収益認識の内容について注記し、財務諸表の利用者が収益の性質・金額・時期及び不確実性を理解できるだけの十分な情報を与えなければなりません。
収益の認識タイミング、金額及び性質などを深く理解するために、この注記情報が決定的に重要となります。

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【いつから適用されるのか?】

本会計基準は2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。

早期適用も認められているため、一部の企業はすでに適用していますが、来年4月1日以後開始する事業年度についてはすべての上場企業に強制適用されます。

適用年度の前年度の財務諸表も遡及的に修正されるので前年度との比較もできますが、遡及適用の例外も認められているので注意が必要です。適用した経過措置の内容についても会計方針の変更に関する注記情報をよく読んで理解しておくとよいでしょう。

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【読む側はどうすればよいのか?】

会計方針などの注記情報を今まで以上にしっかり読んでください。

収益の内容及び性質、認識タイミング、測定などについて知っておかないと財務諸表を読み誤ったり、他社との比較がうまく行えなくなってしまいます。

財務諸表本体は見ても注記までは読まないかもしれませんが、収益は「企業の経営成績を表示するうえで重要な財務情報」ですので、注記情報をよく読み、どのように認識・測定しているのかを十分に理解しておかなければなりません。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。(人”▽`)

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