悪魔の証明?「網羅性」

(※)過去のブログを復活させたものです。画像はイメージです。

悪魔の証明?「網羅性」

 

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。

みなさん、「悪魔の証明」をご存知でしょうか?

調べてみると興味深いのですが、ここでは、一般的に、「できない証明をさせられること」を悪魔の証明とよぶことにします。(参考)https://kotobank.jp/word/悪魔の証明-1724807

ところで、公認会計士が行う監査はB/S(貸借対照表)とかP/L(損益計算書)などの財務諸表が正しいことを「証明する」仕事です。

しかし、「B/Sは正しい」「P/Lは正しい」という命題をいきなり証明することはできません。証明すべき命題があまりに「大きすぎる」からです。ではどうするかというと、まず「大きな命題」をいくつかの「小さな命題」に分割します。つぎに「小さな命題」を一つ一つ証明して、最後に「大きな命題」を証明するのです。

例えば、「B/Sは正しい」という「大きな命題」を証明するためには、「現金は正しい」、「預金は正しい」、「売掛金は正しい」という「小さな命題」に分けて、それらを一つ一つ証明することになります。(実際はもっと細かく分けます。)

では、「小さな命題」を証明するにはどうしたらいいでしょうか?

それを考えるときにとても役立つのが「監査要点」です。

「監査要点」とは「証明すべきポイント」といった意味合いの専門用語で、以下のものがあります。
●実在性(実際に存在しているか)
●網羅性(すべて帳簿に記録されているか)
●権利と義務の帰属(会社が自分のものとして記録すべきものか)
●評価の妥当性(金額はあっているか)
●期間配分の適切性(正しい期間に記録しているか)
●表示の妥当性(ふさわしい名前で表示されているか)

例えば、「預金が正しい」という「小さな命題」を証明するにあたっては、監査要点にしたがって、以下のことを確かめます。
●実在性 預金口座が存在すること
●網羅性 すべての預金口座が含まれていること
●権利と義務の帰属 預金口座が会社名義であること
●評価の妥当性 預金口座の金額とあっていること
●期間配分の適切性 預金口座の残高の日付はB/Sの日付と一致していること
●表示の妥当性 「預金」という名前で表示されていること

このうち、「網羅性」以外の「監査要点」について確かめることは比較的簡単です。例えば、「実在性」についてですが、預金口座の存在を証明する資料(確認状、預金通帳、預金残高証明書など)がひとつでもあれば簡単に確かめることができます。(「評価の妥当性」も難しいですが、ここでは触れません。)

しかし、「網羅性」についてはどうでしょうか?会社が10個の預金口座をもっていると主張しているとして、11個目、12個目の預金口座を隠していないことをどうやったら証明できるでしょうか?

理論的には、世界中の全金融機関から預金口座の情報を入手し、一つ一つしらみつぶしに調べなければなりませんが、そんなことはとうてい不可能です。

「網羅性」を確かめることは「悪魔の証明」に似ています。やってもやってもきりがありません。したがって、実務的には調べる範囲をしぼり、その範囲のなかで「網羅性」を確かめます。したがって、「網羅性」といっても限定的な範囲での「網羅性」となります。「預金」の「網羅性」であれば、会社が現在付き合いのあるすべての金融機関を範囲として確かめることになります。

ちなみに、証明すべき命題の性格によって、どの「監査要点」をより強く重視すべきかは変わってきます。

「預金」などの「資産」は「網羅性」よりも「実在性」の方が重視されますし、反対に、「借入金」などの「負債」は「実在性」よりも「網羅性」の方が重視されます。「資産」は隠すよりもむしろ積極的に見せたいですし、「負債」は見せるよりかはできれば隠しておきたいというインセンティブが働くからです。

ないものをないと言う、またはないと言われているものを発見するのが公認会計士の腕の見せ所と言えます。

【連絡先】
JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

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