内部収益率とゴールシーク
内部収益率とゴールシーク
名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。
事業活動に投資は欠かせません。製造業の会社であれば、工場や機械装置などへの設備に多額の投資をしなければなりませんが、投資のための資金は銀行など外部から借り入れることが多いでしょう。
設備投資のための資金を銀行から年利3%で借り入れるとすると、投資の収益率も3%以上は欲しいところですが、投資がいったい何%の収益率をもたらすかの計算は少し複雑です。
投資の収益率を計算するためには、まず、投資から得られる将来のネットキャッシュフロー(現金収入から現金支出を引いたもの)を年ごとに見積もります。
次に、年毎に見積もったネットキャッシュフローをそれぞれ現在価値(※)に割り引いて合計した金額が投資額と同じになるような利率を「求めます」。この利率が投資の収益率になるのですが、これを内部収益率と言います。
(※)将来の金額的な価値を現在の金額的な価値に引き直したもの。例えば、1年後にもらえる1000円は現在もらえる1000円と同じ価値にはならず、リスクフリーレート(貨幣の時間的価値だけを考慮した利子率)が1%だとすると、現在もらえる990円(=1000円/(1+0.01))と同じ価値になる。今すぐか1年後のどちかに1000円もらえるとすると、今すぐもらったほうが10円余分に得することになる。ちなみに2年後にもらえる1000円は現在のもらえる980円(=1000円/(1+0.01)/(1+0.01))と同じ価値になります。
さらりと「求めます」と書きましたが、この内部収益率を求めるのはかなり時間がかかります。Excelシートに年毎のネットキャッシュフローを入力し、仮に利率を1%としてその現在価値を求めて合計してみましょう。その合計現在価値が投資額と同じであれば、内部収益率の答えは1%です。
もちろん、1回目で同じになるわけはないので、利率を何回も変えてみて、合計現在価値を投資額に近づけていきます。何回かトライすれば近似値を見つけることができるでしょう。
しかし、そんなやりかたをしなくても、Excelには一瞬で正解を求めることができる「ゴールシーク」という機能があります。
例えば、投資の年毎のネットキャッシュフローを以下の表のように見積ったとします。利率は仮に1%としていますが、この場合、年毎のネットキャッシュフローの現在価値の合計は24,453円であり、投資額の20,000円と一致していません。
ここで、ゴールシークという機能を使います。ゴールシークのウィンドウを呼び出し([データ] タブの [データ ツール] グループで、[What-If 分析] をクリックし、[ゴール シーク] をクリック)、数式入力セルには現在価値の合計を表すセル(D36)、目標値は投資額の20,000円、変化させるセルには利率を表すセル(C23)を入力します。最後にOKをクリックすると、Excelが自動的に内部収益率を探してくれます(答えを一発で求めているわけではなく、何度もトライしているのだと思います)。結果は以下のようになります。
内部収益率は4.41728%(小数点6位以下は四捨五入)となりました。この投資は銀行借入利子率の3%を上回っているので、ぜひやるべきでしょう。
ゴールシークはこのように答えを「逆算」で求めるときに向いています。内部収益率の計算以外にも、リース会計を適用する場合などにも使えます。あまり使うことはないですが、知っておいて損はないでしょう。
以上
【連絡先】
JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com
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