課別損益制度の効用と副作用
課別損益制度の効用と副作用
名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。
私が新卒で入社した会社は、当時、上場企業のなかで決算発表がもっとも早い会社でした。(当時はまだ決算といえば単独決算が主流のころで、その後、連結決算が主流になると他の会社に最速決算の座を明け渡してしまいましたが。)
私はその会社で経理部に配属されました。新卒が入社するのは4月であり、4月といえばちょうど決算で忙しいときなので、新卒経理部員はまったく相手にされなかったことを覚えています。
それはともかく、この会社の凄いところは決算の早さだけでなく、秀逸に設計された「課別損益制度」でした。売上や費用は直接それを生み出した営業部門の「課」に紐づけられ(直課)、課ごとにPLを毎月作るというものです。
費用は直接的に課にひもづくものだけではなくて、課よりも上の部署(部、本部など)や間接部門の経費も一定の方法で間接的に課にひもづけられます(配賦)。メーカーが行う製造原価計算と似たような仕組みです。
すごいのは実際に発生した費用だけではなくて、課が独立した会社であったら発生していたであろう機会費用まで、課に直課ないし配賦することです。
この会社はこの課別損益制度を活用して、厳格に予算管理・利益管理を行っていて、堅調な業績をあげつづけることができました。
課別損益制度はかなり完成されたもので、他社から話を聞きたいと言われるほどでしたが、負の面もありました。
売上が順調に立たない課は費用を削らないと利益が出ないので、費用をなるべく削ろうとします。しかし、費用の中で最も大きな割合を占めるのは人件費です。そこで最終手段として人を削る課もなかにはありました。(もちろん会社としては従業員をやめさせられないので、他の部門への配置転換となります。)この課別損益制度で評価される課長さんたちはすごくたいへんだったと思います。課ごとに営業成績がわかってしまうわけですし、他の課との比較にもさらされます。
ちなみに、この会社には課別損益制度以外にも論文制度というすばらしい制度がありました。
入社3年目になった社員は、原則として、すべての業務から完全に解放され、自分が設定したテーマについて論文を執筆し、それを社内でプレゼンテーションするのです。
私はPLだけの課別損益制度を補完すべく、課ごとのBSを作り資産効率の面からも営業成績を評価してみようという趣旨の論文を書きました。とはいえ、課別損益制度が完成されすぎているあまり、当時の経理担当役員のうけはよくなかったです。
以上
【連絡先】
JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com
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