監査は聞かないと始まらないが、聞いただけでは終わらない

(※)過去のブログを復活させたものです。

監査は聞かないと始まらないが、聞いただけでは終わらない

 

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。

監査は英語の「Audit」を訳したものですが、Auditはラテン語の「Audio=聞く」という言葉が由来です。したがって、監査は聞くことになるわけです。

ところが、実際はただ聞くだけでは監査にはなりません。文書などの証拠資料で聞いたことを裏付ける必要があるからです。証拠資料にあたってみると、聞いたことと事実が異なることはいくらでもあります。

嘘をつくつもりはなくても、人の記憶はとてもあいまいですし、事実の捉え方も人によって違いますので、必ず証拠資料にあたって監査人自ら事実を確かめなければなりません。

では聞くこと、すなわち「質問」はあまり意味がないことなのかというとそうではなく、質問は監査の始まりにしてとても重要な、れっきとした「監査手続」のひとつです。

質問といっても監査の専門家が行うわけですから、通常の意味での質問とはやや異なります。きちんとした目的があって、きちんとした回答を得るために行われるものであって、そうそう簡単にできるものではなく、熟練した経験が求められます。

売掛金勘定を前期と比較分析してみて金額が大きく増加していたとして、その大きな増加の理由を監査人が会社に質問するとします。

このとき、「どうして売掛金が大きく増加したのですか?」と質問したのでは、監査人失格です。問いの立て方が抽象的すぎるからです。これでは会社は的確な回答をしてくれないでしょう。「さあ?」と言われておしまいです。問いへの答えは問いの立て方で決まってしまうのです。

質問するのであれば、なんらかの仮説をもたねばなりません。例えば、新規取引先や新規事業のせいで増えたのかもしれない、期末に売上が集中して増えたのかもしれない、入金時期がずれたから増えたのかもしれないといったいくつかの仮説が立てられます。

しかし、もう少し質問するのを我慢して、仮説を裏付けられないか勘定明細や元帳などを調べてみます。勘定明細のなかに今まで見たこともない得意先の巨額な売掛金があったとすると、ここではじめて質問が可能になってきます。この得意先との取引内容や金額の根拠などを質問すれば、会社も証憑を示しながら具体的に回答することができるでしょう。

監査は質問がいかにうまくできるかが成功の鍵です。的確な質問ができれば、的確な回答が返ってきますし、あとは証拠できちんと回答の裏をとればいいのです。

監査は聞かないと始まりませんが、聞いただけでは終わらない。ご理解いただけたでしょうか。

以上

JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
電話: 090-1811-5461
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

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