監査における質問

 

「監査における質問」

 

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。

今回のテーマは「監査における質問」です。

「質問」というと誰でも日常的に行っているでしょうから、わざわざテーマにすべきことなのかと思われるかもしれません。

ところが「監査における」質問は監査人が職業的専門家として行う質問であり、日常でされる質問とはまるで違います。

質問はれっきとした監査手続きのひとつであり、しかもとても重要な手続きなのです!

質問は監査基準のなかで以下のように定義されていますが、簡単に言うと、監査のために必要な情報を得ることです。

「監査手続(レビュー手続)の手法の一つ。監査人(業務実施者)が財務又は財務以外の分野に精通している企業内外の関係者に情報を求める手続をいう。」

監査における質問には日常でされる質問とは違って気を付けるべきことがたくさんありますので、以下では①質問前、②質問中、③質問後に大きく分けてそれぞれ詳しく解説していきます!

 

目次
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①質問前~しっかり準備しよう
②質問中~気持ちよく話してもらおう

③質問後~問題をフィードバックしよう
④まとめ

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【①質問前~しっかり準備しよう】

(1)質問の目的をはっきりさせること

質問は必要な情報を得る手段なので、必ず目的があるはずです。その目的をまずはっきりさせましょう。

例えば、あなたが初めての会社を担当するのであれば、会社の事業内容などを知りたいはずです。その場合は「会社の事業内容を知ること」が目的になります。

(2)情報収集を可能な限り行うこと

情報を得る手段は質問だけではありません。会社の事業内容を知りたいのなら会社のホームページで紹介されているでしょうし、パンフレットやカタログを作っている場合もあります。

質問相手に余計な時間を取らせないために、質問する前に入手できる情報をできる限り収集しましょう。

(3)質問内容を明確にすること

情報収集を行っても必要な情報がすべてそろうわけではありませんし、読んだだけでは分からない情報もあります。

収集した情報を整理しつつ、足りない情報、さらに詳しく聞くたい情報を洗い出し一覧表にしましょう。こうすることで質問内容が明確になります。

質問内容はなるべく「はい」「いいえ」で答えられるところまで具体的に落とし込んでおきましょう。そのほうが相手が答えやすいからです。

「はい」「いいえ」で答えられない質問はオープンクエスチョンと言いますが、相手によっては答えにくかったり、逆に無関係なことを回答される恐れがあります。自由に話してもらったほうが良い場合などを除き、使うべき局面を限定しなければなりません。

(4)誰に質問するべきか考えること

質問内容によって誰に聞くべきかが変わってきますし、ときには複数の人に聞かねばならないことがあります。

会社の事業内容であれば、社長や事業部長など高い役職の人物のほうが詳しいでしょうが、個別の取引などより細かく知りたい場合であれば担当レベルの人物に聞くことになります。

質問内容について責任を持たない人や詳しくない人に質問しても期待する回答は得られません。仲が良いからとか聞きやすそうだからという理由で質問相手を決めてはいけません。質問相手を間違えると質問という監査手続の失敗につながります。

(5)アポイントをとること

質問相手の業務の都合などを考慮して、なるべく迷惑がかからない日時を選んでアポイントを取りましょう。当然ですが、相手の役職が高くなるほどアポイントの難易度は上がりますので、早めかつ慎重にアポイント交渉しなければなりません。

(6)必要な資料などを依頼しておくこと

質問内容によっては具体的な資料やツールを使いながら回答してもらったほうがよいこともあります。これも相手の事情を考慮しながら必要に応じて依頼しておきましょう。上記(3)のときに依頼する資料も同時に考えておくと良いでしょう。

 

【②質問中に気を付けるべきこと】

(1)心構えとマナー

質問相手は監査のことを詳しく知らないのが普通ですし、質問に回答することを特に義務だとは感じていません。もちろん長年監査を受けている会社であれば事情は異なりますが、相手が喜んで協力してくれることを当然に期待しないようにしましょう。

質問相手は自分の業務を抱えていて、忙しい合間を縫って監査に「しぶしぶ」協力してくれているのだと思っておいたほうが無難です。だからといって卑屈にならなくてもよいです。

なお、あいさつや服装などのマナーについても言うまでもなく気をつけましょう。

(2)質問を始まる前にまず感謝

質問に入る前にまずは時間をとってくれたことに感謝しましょう。第一印象が悪いと質問がとてもやりにくくなってしまいます。

その後、すかさず質問の目的・内容・時間・進め方などについて説明しましょう。特に監査に慣れていない人物の場合、これからいったい何を聞かれるのか内心びくびくしています。中には自分が悪いことをしたと疑われているのかもと思う人もいらっしゃいます。目的などをしっかり説明することでこれから何が起こるのか予想をつけられるので、質問相手はずいぶんと安心することができます。

いきなり質問しないようにしましょう!

(3)聞くことに徹する

質問中は相手の話を聞くことに徹しましょう。適度にあいづちをうち、話をなるべく遮らないようにします。ただ、無関係な話がつづく場合は、きりがよいところで本来の話題に戻しましょう。

質問相手の回答をメモに取ることも重要です。メモの取り方はノートに手書きするのか、PCで記録するのかあなたのスタイルを決めておきましょう。あとで整理したりまとめることを考えればPCを使うほうが効率的です。しかし、PCが使えないこともありますし、手書きでないとメモをとりづらいこともあるでしょうから、状況によって使い分けましょう。

ホワイトボードが使えるのであればぜひ使いましょう。音声の言葉だけですとお互いのイメージを伝え合うのは困難ですが、ホワイトボードがあるとイメージを視覚的に共有することができるので、コミュニケーションがとてもスムーズになります。

(4)問題を見つけたら?

質問をしていると会社の問題(業務の誤り、ときには不正行為など)を見つけてしまうことがあります。

そのようなことがあっても特に驚いたり、顔をしかめたりなどしてはいけません。良い悪い、正しい正しくないなどの価値判断をせず、努めて冷静にふるまいましょう。(少なくとも質問中は。)

間違っても責めたり問い詰めたりしてはいけません!

あとあと問題を指摘するために、さりげなく詳しめに聞く程度でよいです。

(5)なかなか良い回答が得られないときは?

質問をしているとときどき会社の行動や処理などの理由が分からないことがありますが、「なぜ?」を執拗に繰り返さないようにしましょう。やりすぎると相手の反感を買ってしまいますので、どうしても分からないことはいったん書き留めておき、別の機会に聞くか、別の人物に聞くようにしましょう。

また、そもそも相手が言っていることがわからないことがあります。そのようなときは「こういう理解で合っていますでしょうか?」「別の言い方をするとこういうことでしょうか?」などと問い返してみましょう。「おっしゃっていることが分かりません」と言うよりもセンスがあります。もし違っていれば、もう一度説明してもらえるでしょう。

それでも思うような回答が得られないとイライラしてしまい、ほしい回答を得られるように無意識に相手を誘導してしまうことがあります。「こういうことじゃないですか?」「こういうことにしましょう!」という言葉が出はじめたら、あなたが相手を誘導しているサインですのでいったん落ち着きましょう。思うような回答が得られないときは仕切り直すことも大切です。

(6)質問が終わったら改めて感謝

質問が終わったら、改めて相手に感謝の意を伝えましょう。

未回答の質問がある場合や追加の依頼事項などがある場合は、その場で互いに確認してから別れるようにしてください。

 

【③質問後のフォローアップ】

質問後は忘れないうちにすばやく回答結果をまとめましょう。PCでメモを取ってあればあとからでも作業できるかもしれませんが、手書きですと自分の字なのに読めなくなることがありますので早くやってしまったほうがよいです。

まとめている間に分からないことや矛盾に気づくこともありますので、それも書き留めておき別の機会に質問しましょう。

発見した問題については特に詳細に文書化しておく必要があります。もし必要であれば、後日あらためて時間をとって会社の方に問題を指摘し、さらに詳しい情報や資料を求めましょう。

【④まとめ】

監査における質問は日常の質問とはずいぶん違うことがおわかりいただけたでしょうか。

監査に限らず、職業として質問する必要がある場合はここに書いたことは役立つと思います。

もし役立ったのならうれしいです!

以上

JIM ACCOUNTING
代表 公認会計士・税理士 児島泰洋

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