財務諸表の分析で不正を発見することはできるか?不正シナリオをつくれ!

(※)過去のブログを再度アップしたものです。画像はイメージです。

財務諸表の分析で不正を発見することはできるか?不正シナリオをつくれ!

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。
以前、分析で財務諸表の異常を発見する方法について書かせていただきました。
分析で財務諸表の異常を発見することは可能か?

ここではもっと踏み込んで、財務諸表の分析で「不正」を発見する方法について考えてみましょう。

財務諸表の分析で不正を発見するための手順は、例えば、以下のようになります。

①分析の対象となる会社を知る

分析する前に、まず会社の業種業態・商慣行・組織の特徴などを知っておかなければなりません。分析の対象となる会社でどのような不正が起きうるか考えるためには、そのような情報が必要になるからです。

また、もしあれば、過去に起きた不正事例や、同業他社で起きた不正事例の収集も行います。

②不正シナリオをつくる

①で入手した情報をもとに分析対象となる会社で行われうる不正を検討します。この行われうる不正のことを「不正シナリオ」といいます。不正シナリオはひとつとは限らず何種類か同時につくります。

例えば、商社であれば、「循環取引」(※)という不正がよく行われますので、これを不正シナリオに加えます。

(※)循環取引とは、複数の会社(3社以上)が共謀して、同じ商品を延々と会社間で売買しつづける取引のことをいう。循環取引は資金繰りに困った会社や売上を大きく見せたい会社などで行われることが多い。この場合、商品は実際はほとんど動かないかそもそも存在せず、伝票だけの操作が行われるのですが、納品書や請求書もしっかり作られるため、発見はなかなか難しい。商社はもともと、仕入先の商品を直接、得意先に出荷するという直送取引をよく行いますので、循環取引はますます発見されにくくなります。

③財務諸表のどの科目でどのような変化が起きるかを検討する

不正シナリオができると、その不正によって財務諸表のどの科目あるいは財務指標にどのような「変化」ないし「傾向」があらわれるかを検討します。

さきほどの循環取引でいうと、例えば以下のような変化が現れます。

    • 売上が急に増える(それ以降は徐々に増える)
    • 粗利益率が徐々に悪くなる
    • 売掛金の回収期間が徐々に長くなる
    • 在庫の回転期間が徐々に長くなる

売上が急に増えるのは容易に想像できると思います。粗利益率が徐々に悪くなるのは、循環取引はそもそも利幅が大きくないですし、同じ商品が何度も売買されるうちに利幅は相対的に小さくなっていくからです。また、循環取引は資金繰りに困った会社が行うものですし、そもそも実体がない取引ですから、売掛金の回収までの期間が徐々に長くなっていきます。在庫についてもほぼ同様です。注意しなければならないのは、ただ単に売掛金が増えることとは全く違うことです。

このように不正シナリオに応じて、モニタリングすべき科目・財務指標を決めていきます。

④スコアリングモデルを設計する

分析対象となる会社が何十社もあったり、モニタリングする科目や財務指標がいつくもある場合は、③の条件にどの程度あてはまるかによってスコアをつけます。このスコアをつけるためのルールを定めたものがスコアリングモデルです。

例えば、売掛金の回収期間でしたら、前年(または前月)と比較して15%長くなっていたら5点、10%長くなっていたら3点、5%長くなっていたら1点といった具合にスコアを決めていきます。

スコアリングは結果を見ながら調整することもあります。

⑤財務諸表のデータを収集・分析し、スコア化する

財務諸表のデータを数年分、またできれば月ごとのデータを収集して分析にかけます。そして、④でつくったスコアリングモデルによって、会社の「不正度」をスコア化します。なお、これを行うためにはExcelを駆使するか、専用のソフトを使います。

以上が不正を発見するざっとした手順になります。

分析対象が少なければ、④と⑤までやらなくてもかまわないでしょう。また、不正シナリオも最初からより具体的に考えることができますし、データも詳細なデータを使用することができます。

分析対象が多い場合は、より粗い不正シナリオ、より粗いデータを使うことになりますので、⑤のスコアが高い会社に対象をしぼって、さらに詳細な分析を行うのがよいでしょう。

詳細な分析によって不正が行われている可能性が高い商品・部署・担当者までしぼりこむことができれば、その会社または部署だけを内部監査することによって、実際に不正が行われていないか内部監査することになります。

私は過去に上記のような仕事をしたことがありますが、とても骨の折れる仕事でした。①から③は比較的スムーズにいきましたが、④と⑤は何度もループしなければ最適解が見つからないので、とても時間がかかったことを記憶しています。

おかげで不正を「過去に起こしていた」会社を発見することができました。(依頼主はわざとそれを教えてくれませんでした。)

不正が気になる経営者の方がいらっしゃいましたら、是非ご相談ください。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

メルマガもやってます!ぜひご登録を!
↓ ↓ ↓

メルマガ JIM連絡

 

 

お問い合わせは以下のフォームからも行うことができます。

エラー: コンタクトフォームが見つかりません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA