職務分掌はあったほうがよいのか

※以前のエントリーを復活させたものです。

内部監査人が会社の内部統制(業務を正しく行わせるための仕組み)ができているのかチェックするとき、きまって注目するのが職務分掌です。

職務分掌は多くの従業員がいっしょに仕事をするとき、各部署や部署内の一人一人の従業員の役割を決めたものです。野球でいえばファーストやセカンドなどの守備位置のことです。職務分掌は部門ごとに作られ、例えば経理部であれば、出納担当、仕訳記帳担当、伝票承認担当といった具合に役割が分担されます。

職務分掌がないと誰が何をするのか明確でないため、誰もやらない作業がでてきたり、逆に誰もがなんでもやれてしまう状況になってしまい、組織として業務を漏れなく行えなくなったり、勝手な行い(ひどい場合は資産の横領などの不正)を許すことになってしまいます。

したがって、職務分掌がないと内部統制もないと見なされてしまい、内部監査人から職務分掌を作るようにきついお咎めをうけることになります。

ところが、職務分掌にはデメリットもあります。人は自分の守備範囲を決められると、他人の守備範囲には無関心になるという性質があります。せっかく組織として仕事しているのに、互いに助け合うという当然の行いができなくなってしまうのです。また、自分がやりたいと思っていた職務を任されなかった場合、従業員のモチベーションを下げてしまうこともあります。

私もかつて経理部で仕事をしていましたが、やりたい職務は他の経理部員が担当していて残念に思った経験がありますし、他の経理部員が忙しそうにしていても関係ないと思っていたことがありました。

このようなことを避けるには、職務分掌を定期的にローテーションしたり、状況に応じて助け合える柔軟な運用が求められます。その場合、部門のリーダーがきちんとリーダーシップを発揮することがとても重要です。

内部監査人も職務分掌がないことを理由に、杓子定規に不備を指摘するのを控えるべきでしょう。特に、少人数でぎりぎり職務を回している組織では、職務分掌はかえって柔軟な運用を妨げることもあります。きちんと実態をみて、職務分掌をつくるのが本当によいことなのかどうか慎重に検討しなければなりません。

【連絡先】
JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
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