IASBがのれんの会計処理と開示に関するDPを公表

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。

IASB(※)が2020年3月19日にのれんの会計処理と開示に関するディスカッションペーパー(以下、DPという)を公表しました。

Discussion Paper DP/2020/1
「Business Combinations – Disclosures, Goodwill and Impairment」
IASBのサイトへのリンク

今回はこのDPの概要であるSnapshotの内容について解説させていただきます。

(※)International Accounting Standards Board、国際会計基準審議会
国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)を開発する機関

目次
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
①目的
②IASBの予備的見解

③まとめ
④今後の進め方

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【①目的】

企業が他の企業を買収したときの従来の会計基準(IFRS第3号「企業結合」)について、IASBが基準利用者に対して意見を求めたところ、以下のような問題が寄せられました。

IASBは上記の問題に対処するため、新しい会計基準を開発するための議論のたたき台となるDPを公表し、意見を求めることにしました。

【②IASBの予備的見解】

上記の問題に対するIASBの予備的見解は以下の通りです。

上記の関係者の懸念との対応関係は以下の通りです。

IASBの予備的見解は現行の会計基準を大きく変えるわけではありませんが、投資家が求める情報の開示と、実務家が求める減損テストの簡素化に配慮した内容となっています。

予備的見解①について

投資家は経営者がいかにうまく買収を実行し、その後どれほどの成果を上げたのかという情報を求めています。しかし、従来の会計基準はそのニーズには答えていませんでした。

そのため、IASBは買収の目的と当該目的が買収後どの程度達成されたかに関する情報を企業に開示させようとしています。

ただし、企業のChief operating decision maker(最高業務意思決定者)が買収した事業に対して行うであろうモニタリングの方法を尊重して、当該方法によるモニタリングの情報を開示することとしています。

予備的見解②について

Ⓐ減損テストをより効果的にできるか?

減損テストについては2つの問題が指摘されており、これに対するIASBの見解は以下の通りです。

Ⓑのれんは償却すべきか?

IASBは話題となっていたのれんの償却には消極的な姿勢をとっていて、今までどおり減損テストのみを行うアプローチを維持すべきであるという見解をとっています。

なぜなら、のれんを償却することが重要な改善につながることを認めざるを得ないような証拠はないからであるとしています。

なお、のれんの償却と減損テストをそれぞれ支持する主張は以下の通りです。

Ⓒ減損テストを簡潔にできるか?

IASBはこの問題に対しては以下のような肯定的な見解を示しています。

①のれんの減損の兆候がなければ、毎年度の減損テストは求めない。ただし、そのような兆候が存在するかどうかの評価は求められる。

②使用価値の見積りにあたっては、以下の通りとされました。

・確約のない将来のリストラまたは資産の増強からのキャッシュフローを含めることに対する制限を取り除く

・税引後の割引率および税引後のキャッシュ・フローの使用を認める

予備的見解③について

IASBはのれんを除いた純資産の金額をBS上に表示することによって、のれんを投資家に対してより際立たせるようにするとのことです。

企業結合のときに認識されるブランドなどの無形資産については異なる見解があるものの、IASBはその範囲を変更する納得感のある証拠はないとしています。

【③まとめ】

IASBの予備的見解をまとめると以下の通りです。

【④今後の進め方】

IASBはDPに対するコメントを2020年9月15日まで募集しています。

その後、IASBは受け取ったコメントを検討し、公開草案を開発するかどうかを決定するとのことです。

以上

JIM ACCOUNTING
代表 公認会計士・税理士 児島泰洋

 

お問い合わせは以下のフォームからお願いいたします。

IFRIC第23号「法人所得税の税務処理に関する不確実性」の解説

【関連ブログ】
以下では繰延税金資産・負債が登場します。
繰延税金資産・負債に関してはこちらのブログをまずご覧ください。
繰延税金資産とは何か?

 

目次
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
①はじめに
②背景
③不確実性を考慮しない会計処理
④不確実性を考慮した会計処理
⑤比較
⑥開示規定
⑦まとめ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

①はじめに(IFRSやIFRICをご存じでない方へ)

IFRSあるいはIASという言葉を聞いたことがある人でも、IFRICという言葉は聞いたことがない人が多いと思います。(※)

IFRSはヨーロッパの国々を中心に世界各国で使用されている国際的な会計基準のことで、日本でも200社を超える企業がIFRSを使って財務諸表を作成しています。なお、IASはIFRSの古い呼び名です。

IFRICはこのIFRSの足りないところを補うものだと思ってください。

すなわち、IFRSでは必ずしも明確な定めがないときに、IFRICはそれを補うための一定の考え方となる指針を与えてくれるのです。

IFRIC第23号「法人所得税の税務処理に関する不確実性」(以下、本指針という)はIAS12号「法人所得税」を補うものとして、2017年6月に公表され、2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用されることになっています。

IFRSを適用している企業で3月決算の会社であれば、2019年4月1日時点から適用することになります。

(※)略語について

IFRS: International Financial Reporting Standards(国際財務報告基準)
IAS: International Accounting Standards(国際会計基準)
IFRIC: International Financial Reporting Interpretations Committee(国際財務報告解釈指針委員会)

なお、以下の説明では簡略化のため、用語や内容等に関して厳密な正確性にはこだわっておりませんことをあらかじめご容赦ください。

②背景

IFRIC第23号ができた背景を考えます。

法人税等の計算を行うとき、会社は例えば以下のような判断を行います。

・益金や損金を申告するか否か
・益金や損金をいつ計上するか
・益金や損金をいくら計上するか

例えば、100万円のソフトウェアを年度の初めに購入し、会計上は半額の50万円を費用に、税務上は90万円を損金(以後、会計上の収益・費用も税務上の益金・損金という用語に統一します)に計上したとします。ところが、もし税務調査が入った場合、ソフトウェアは通常5年で償却しますので、90万円全額が損金として認められる可能性は低いと思われます。つまり、税務調査が入って指摘をうけるあるいはうけないことが決まるまで、この90万円は損金として認められるかどうか「不確実」な状態にあるといえます。

税務調査で損金にできないと指摘されれば法人税等を追加で支払わないといけませんし、なにも指摘されなければ法人税等を追加で支払わなくてもよくなりますが、実際に税務調査が入るまではどちらに転ぶか分からないからです。

このような税務上の処理の不確実性をどのように会計処理するべきかIAS12号には明確な定めがなく、会社によって実務が異なっていました。

そのため、この不確実性に関する会計処理を明らかにするために本指針が公表されたのです。

ちなみに、同様の会計基準はアメリカではすでに2007年に導入されています。(旧FIN48。現在はASC740)

日本では上記のような損金を積極的に多く計上して法人税等を減らす税務申告はあまり一般的ではありませんが、欧米では法人税等も費用のひとつと考えているため、多少の無理はあっても益金は少なめに損金は多めに申告する傾向があるようです。

欧米企業は認められるかどうか不確実な税務処理をたくさん(?)行っているため、このような会計基準が必要となったのです。

 

③不確実性を考慮しない会計処理

実際の税務申告をもとに法人税等および繰延税金資産・負債を計算し、不確実な税務処理が税務当局に将来否認された場合の影響(法人税等の追加支払いなど)に対しては引当金を積むなどの何らの会計処理を行わない想定で説明します。

上記の例でソフトウェアの購入による支出額100万円のうち、会計上は50万円、税務上は90万円を損金に計上したとします。

このとき、税務調査が入ったとするとソフトウェアを購入した年度に損金として認められる金額は20万円(=100万円/5年)になるとします。

また、益金は損金を十分に上回ることとし、損金や繰延税金資産・負債の計上が法人税等を増減させる効果だけを考えます。

税率は30%とします。

そうすると、以下の図のようになります。

税務申告上は90万円を損金に計上しますので27万円の法人税等減額効果がありますが、会計上は50万円だけを損金に計上しますので15万円の法人税等減額効果しかありません。税務申告と会計の差異40万円はこの場合は将来加算一時差異(将来的にはなくなる差異)となり、会計から見ると税務申告は法人税等を12万円余分に減らしていることになります。

そのため、繰延税金負債を12万円計上し、法人税等調整額を同額計上することによって法人税等減額効果を一部取り消します。

このときPL(損益計算書)およびBS(貸借対照表)は以下の通りとなります。

④不確実性を考慮した会計処理

では不確実性を考慮した場合の会計処理はどうなるのでしょうか。

③では会計と税務申告の2つがあって、それぞれのソフトウェアの損金計上額と簿価の違いに着目していました。

ここでもうひとつ「保守的な税務申告」を登場させます。すなわち、税務調査をうけても指摘を受けないであろう税務申告をした場合の損金計上額と簿価を考えます。

上記の例だと、「保守的な税務申告」では、ソフトウェアの支出額100万円のうち、支出した年度に認められる損金を20万円とします。

そうすると、以下の図のようになります。

(B)「保守的な税務申告」が(A)「会計」と(C)「実際の税務申告」の間に挟まることによって、(A)と(B)の差異から繰延税金資産が生じ、(B)と(C)の差異から追加の法人税等が生じます。

このときPL(損益計算書)およびBS(貸借対照表)は以下の通りとなります。

⑤比較

③と④を比較してみると、(A)会計上の法人税等、(C)実際の税務申告上の法人税等はどちらも同じですが、(B)保守的な税務申告を行った場合に課されるであろう法人税等を追加で計上しているところが異なります。

また、繰延税金資産・負債の金額が異なっています。これは繰延税金資産・負債を計算する基礎が、(A)と(C)のソフトウェア簿価の差異ではなく、(A)と(B)のソフトウェアの簿価の差異に変わったためです。

いずれにしても、この例ではPLに最終的に与える影響は結局は同じになります。不確実性を考慮しない場合でもする場合でも、税効果の認識によって会計上の法人税等の金額になるように調整されるからです。

ところが、移転価格税制で将来課税される不確実性がある場合などは、事情が異なります。移転価格税制による所得の申告もれを指摘された場合、この申告漏れは単純に法人税等を増加させるだけです。その後、再び損金になることはありません。したがって、税効果の対象とはならず法人税等の総額が増加することになります。

⑥開示規定

本指針が特別に定めた開示規定はありません。

IAS第1号「財務諸表の表示」や、IAS第12号「法人所得税」などの規定にしたがって開示を行うことになります。

⑦まとめ

いかがでしたでしょうか。

本指針は2019年度の期首からすでに適用されていますが、期首時点で適用による影響額を開示した企業は当事務所の調べでは数社しかないようです。

期末決算ではどうなるかが注目されます。

以上

JIM ACCOUNTING
代表 公認会計士・税理士 児島泰洋

 

(※)質問や意見等ございましたら、以下の問い合わせフォームからお問い合わせください。

繰延税金資産とは何か?

公認会計士の児島泰洋@名古屋です。

新聞報道でもおなじみの「繰延税金資産」ですが、いったいどんな資産なのか記者の方がよく理解されずに書かれているのでは?と思うことがよくあります。

そこで、会計のことを詳しくご存じでない方でもご理解いただけるような説明を試みさせていただきます。

(単純化のため、以下の説明では住民税や事業税は無視します。繰延税金「負債」も考えません。税率は30%とします。金額単位は省略します。また、学術的に必ずしも正確ではない部分もありますことご了承ください。)

【繰延税金資産が誕生した背景】

繰延税金資産は税効果会計が1998年に導入されたときに誕生した勘定です。

税効果会計が導入される前は損益計算書で計上される税金費用は税法にしたがって計算される「法人税」のみでした。ところが、法人税は損益計算書で計算される「利益」とは異なる「所得」をベースに計算されますので、会計上の「利益」と税法で計算される「法人税」がまったく釣り合わない結果となっていたのです。

例えば、利益が50であれば税金費用は15になりそうですが、実際には50だったり(税率100%?)、0(税率0%?)だったりしたわけです。

これだと企業の実態を見誤ることになりませんか?

【繰延税金資産は会計と税務のちがいによって生まれる】

なぜ会計上の利益と税法上の所得が異なるのか図示すると以下のようになります。

上の図のように、会計と税務では収益と益金、費用と損金の範囲がそれぞれ異なり、したがって利益と所得も異なってくるのです。

ただし、重なる部分(②⑤)もあるため、異なる部分だけ(①③④⑥)を足したり引いたりすれば、以下のように利益から所得へ調整することができます。これを加算、減算と言います。

所得 = 利益 + 加算(③+④) - 減算(①+⑥)

異なる部分は時間がたてば解消するもの(一時差異)と、永遠に解消しないもの(永久差異)があります。このうち、税効果会計の対象となるのは一時差異のみです。

一時差異は会計と税務の間の収益ないし益金、費用ないし損金の認識時期のずれ(通常は会計の方が早い)によって発生するのものであり、時間がたてば解消します。引当金費用が代表的なものです。(税法は基本的に引当金を認めません。)

他方、永久差異は認識時期のずれではないため、時間がたっても解消しません。代表的なものは交際費です。(税法では一部を除き交際費を損金として認めません。)以下では、永久差異はないものとします。

【繰延税金資産は翌期以降の税金費用を減少させるものである】

会計上の利益と税法上の所得、会計上の税金費用と税法で計算される法人税の関係を図示すると以下の通りです。(数字は仮置きしたものです。以下同じ。)

所得は利益よりも10多いので、法人税が税金費用を3上回ります。

会計上は15だけ税金費用を計上すればよいのに、実際は法人税を18支払うわけですから、差額の3は前払したものと考えます。

払いすぎた3は将来の期に一時差異が解消したときに取り返すことができるからです。

しかし、法人税はあくまで18ですから、税金費用を15にするために、繰延税金資産を計上するとともに、法人税等調整額という勘定を使って税金費用を減らす処理をします。

すると損益計算書(抜粋)は以下の通りとなります。

法人税等    18

法人税等調整額 ▲3

税金費用    15

繰延税金資産は貸借対照表の資産の部に計上されます。

【翌期の処理】

当期の加算、減算が翌期にそれぞれ解消したとすると、以下のようになります。

このように翌期では法人税が税金費用を3下回っています。前の期に払いすぎた税金を取り返すことができたというわけです。

すると損益計算書(抜粋)は以下の通りとなります。

法人税等    12

法人税等調整額  3

税金費用    15

繰延税金資産は貸借対照表の資産の部から消滅します。

【回収可能性とは】

繰延税金資産とセットでよく言われるのが、回収可能性です。

実は前払した税金は将来必ず取り返せるとはかぎりません。上の例では十分な利益ないし所得があるからこそ取り返すことができたわけです。もし利益が0だったら、所得はマイナス10になるので法人税の支払が生じません。そもそも法人税の支払がないので、それを減らすこともできないわけです。

この状態がずっとつづく場合、回収可能性がないと判断され、繰延税金資産を計上することができなくなります。

つまり、繰延税金資産はこれからもずっと所得を出し続けられると予想される会社しか計上できないわけです。

【まとめ】

繰延税金資産が何かと問われたら、「一時的に支払いすぎた税金」であるとご理解ください。ただ、将来にわたって取り返せる範囲でしか計上できませんので、十分な所得を生み出し続けるであろう会社だけが計上できます。

 

JIM ACCOUNTING

代表 児島泰洋

 

ブログに関するお問い合わせは以下のフォームからお願いいたします。

【告知】メルマガ始めます!

こんにちは。

公認会計士・税理士の児島泰洋です。

JIM ACCOUNTINGという屋号で会計事務所を営んでおります。

当事務所がどのような価値を生み出し、企業のお役に立ちたいかをお伝えするためにメルマガを始めることを予定しております。

第1弾のメールマガジンは今話題の「働き方改革」をテーマにさせていただきます。

どうかご期待ください。

ご興味がございましたら、以下のフォームからお申込みください。👇

特典などもご用意させていただく予定です。

【募集】困ったExcelファイルを送ってください

こんにちは。

突然ですが、どうにも入力がしにくいExcelファイル、複雑すぎてどうにもできなくなったExcelファイル、作り変えたいけど怖くてできないExcelファイルなどありましたら、当事務所に送っていただけないでしょうか。

当事務所で改良したうえで納品させていただきます。

料金は1ファイルあたり5,000円からとさせていただきます。表計算の内容、複雑性、プログラムの有無などによって変わってまいります。場合によっては、お受けできないこともごさいますのでご了承ください。

もちろん、機密情報などは含まない形にしてください。仮に含まれていても守秘義務を守りますのでご安心ください。

早めにお問い合わせいただいた方には半額でご提供させていただきます。

お問い合わせから納品までの流れは以下の通りです。

①お問い合わせ

メール、電話または以下の問い合わせフォームからご連絡ください。

②ヒアリング

こちらからお客様のご要望、ファイルの内容についてメールまたはお電話にてヒアリングさせていただきます。

③見積り・納期回答

料金のお見積と納期をお知らせいたします。

④納品

改良したファイルを納品させていただきます。

⑤アフターフォロー

改良したファイルにもしこちらの責任による不具合があった場合は、ファイルを追加料金なしで修正させていただきます。

 

よろしくお願いいたします。

JIM ACCOUNTING 代表 児島泰洋

メール:yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

電話:090-1811-5461

まず詳しいお話をお聞きになりたい場合は、以下のフォームからお問い合わせください。

お知らせ

※過去のエントリーを随時復活中です。

2019/12/18

 

たいへん申し訳ありませんが、いったんすべての投稿を非公開にさせていただきました。

内容を見直した上で、順次公開させていただきます。

JIM ACCOUNTING

2019/8/18

連結決算とエラーチェック

※以前のエントリーを復活させたものです。

会社内のある部署が別の部署に資料の提供を依頼することはよくあります。

私がいた会社の経理部でも決算などにあたっては、総務・人事・財務などの他部署から、固定資産や各種保険、給与や賞与、預金や投資などの情報に関する資料の提供を依頼することがよくありました。(ちなみに、このときは同じ社内なのに、丁寧な依頼書を毎回作成していました。)

他部署に資料を依頼するとき注意しなければならないのは、資料内における情報と情報の整合性です。例えば、とある勘定残高とその明細の合計は必ず一致していなければなりませんが、不一致のまま提出されることがあります。そうなると、また資料の提供を依頼する羽目になり二度手間になってしまいます。資料を提供する側も何度も資料を提供させられるのはごめんでしょう。

依頼する部署ではそうならないように資料のフォーマット(普通はExcelファイル)を自ら作成し、エラーチェックするロジックを組み込んでおくとよいでしょう。チェックロジックによりエラーが出ている状態では、提出が物理的に不可能にしてしまうとさらに強力です。

上記は同じ社内の場合ですが、連結決算では親会社が子会社に対して決算書とその明細などの資料を要求します。子会社が国内や海外に何社もあるような会社では資料の誤りがあると、確認や修正に手間がかかり連結決算の締め切りに間に合わなくなってしまいます。

そのため、子会社の決算情報を集めるためのツールであるる連結パッケージには厳格なエラーチェックが何百種類も組み込まれます。

連結パッケージはwebベースのものもあれば、Excelベースのものもありますが、いずれにせよこのエラーチェックが組み込まれていて、通常は重要なエラーがすべて消えるまで提出できない仕組みになっています。

エラーチェックの組み込み方はいくつかあって、Excelベースの連結パッケージであれば、①Excel本来の機能を生かしたものと②チェックプログラムによるものがあります。

①の例

    • 計算式を利用して、セルA(勘定の残高欄)とセルB(当該勘定の明細の合計欄)が一致しないなどのエラーがあれば「False」などと表示させる
    • 条件付き書式を利用して、エラーがあればセルを赤色にする
    • 入力規則を利用して、そもそも不適切なデータ(日付を入れるセルに文字が入力されているなど)を入力させないようにする

②はシステム会社が独自にプログラムするもので、やることは①と基本的に同じです。Excel本来のエラーチェックを巧みに回避してしまう会社もあるので念のために備えられる場合と、複雑な論理チェックをするためなどに用いられます。

①と②をクリアすると、子会社はようやく親会社に連結パッケージを提出できるわけです。

エラーチェックというのは要するにつぶすべきチェック項目をツール自体に組み込んでしまうものです。エラーチェックがあれば、他部署ないし他の会社が自らエラーをチェックしなくてもよくなります。検査工程を必要としない「品質は工程で作り込む」という考え方にちょっと似ていますね。

ちなみに、エラーは子会社が自分の力でつぶせるようにすることが大切です。どうやっても絶対に回避できないエラーは起きないようにしなければなりません。私はそのような過ちを犯してしまい、ひんしゅくを買ってしまったことがありますので、気をつけましょう。

JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
電話: 090-1811-5461
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

お問い合わせは以下のフォームからも行うことができます。

VBAのすすめ

※以前のエントリーを復活させたものです。

AIやRPAなどによる業務の自動化がさかんに叫ばれていますが、以前からMicrosoftのExcelやAccessにはVBAというプログラミングツールが実装されています。

Visual Basicというプログラミング言語で特定のアプリケーションを動かすものです。

会計ソフトなどのソフトウェア自体も発達してきていますが、自社の業務にあった処理を行いたいときや、オリジナルの報告資料を作成するには、Excelなどにデータをダウンロードして自ら加工しなければなりません。

データの加工作業は何度も行ううちに定型化されていきますので、定型化された処理をVBAのプログラムに落とし込んでしまえば、自動的に処理させることができます。それによって、加工時間を大幅に短縮でき、かつ、間違いも起こらなくなります。

私は経理部に在籍していた頃、①経理日程表の作成にExcel VBA、②親会社から請求される経費の精算にAccess VBAを使用して、業務を大幅に効率化させました。その実例を紹介させていただきます。

①経理日程表にExcel VBAを使用

経理日程表は2営業日までに売上確定、4営業日までに人件費データ確定といったスケジュールをひとつの表にまとめたものです。

私はこの作業を当初は数時間かけて行なっていました。まだ、Excelに慣れていない新人のときの話ではありますが。1年ぐらい経つとExcelも一通り覚えてだいぶ早くできるようになってきましたが、この表は定型的な作業を手順通りやれば作成できてしまうことに気がつきました。

そんなときにExcel VBAのことを知り、空いた業務時間を利用してプログラミングを独学しながら、ひたすらコードを書いては動かすことに熱中しました。

経理日程表はどの作業をいつまでにというパラメーターさえ指定してしまえば、プログラムに自動的に作成させることが可能でした。

もちろん、すべてのコードを自分で書くことはできないので、「マクロの記録」(Excel上で行った処理を記録し、自動的にコードに変換する機能)も利用しました。条件分岐などは自分でコーディングして、具体的な処理はマクロの記録で自動記述したコードを適当な箇所に挿入しました。

何度も失敗しては、コードを書き直し完成にこぎつけました。

そのおかげで、経理日程表はたった3分でできるようになりました。

②親会社からの経費請求の処理にAccess VBAを使用

親会社からは毎月、子会社のために負担した何十もの経費の請求がAccessデータで送付されました。

経理部ではこのデータをいったん関係部署ごとに紙に落とし(!)、関係部署に社内便で送り、経費を処理すべき勘定科目と負担する部署を紙に書いてもらい、また社内便で経理部に送り返してもらい、その紙の内容を伝票にひとつひとつ入力していくといった作業をしていました。(いま思い返すととても原始的な作業です。)

先輩の助言により、Accessでもらったデータをそのまま活用できることを知った自分は、Access VBAでこの作業を効率化することを思い立ちました。

まず、関係部署ごとに経費を分ける作業は、VBAをわざわざ使わず、Accessの基本機能で行いました。

関係部署に送るときはやはり紙に落として社内便で送りました。(これも今ならデータでそのまま関係部署に送ることができるでしょう。)

親会社から請求される経費について、どの勘定科目、どの負担部署を使用するのかについても、Accessの基本機能(ドロップダウン機能など)を使えば簡単にデータ入力することができました。

この入力データをもとに何十行にもわたる伝票入力をしなければなりませんでしたが、ここはVBAで効率化することができました。この作業も何時間もかかるものでしたが、半分以下には減らすことができました。(当時の会計システムは仕訳データをアップロードする機能がありませんでしたが、現在の会計システムにはアップロードに対応しているものがありますので、さらに効率化できるでしょう。)

VBAの基本構文はそんなに多くないので、その気になれば誰でもプログラミングを身に着けることができます。

プログラミングを学習すると、業務を構造的に理解・記述し、パターン化する能力などが身につくなど副次的な効果もあります。

また、業務をコンピュータに行わせるためにいかに詳細かつ具体的に処理内容を記述しなければならないかを知ることは、自分以外のひとに業務をやってもらうときの指示の与え方の参考になります。

ただ気をつけなければならないのは、あまりに高度かつ複雑なものを作ってしまうと、メンテナンスできる人がいなくなってしまうことです。

定型的な作業を手作業で行なっている方は、ぜひVBAの活用をご検討ください。

JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
電話: 090-1811-5461
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

お問い合わせは以下のフォームからも行うことができます。

 

キャッシュ・フロー計算書の解説-現預金が増えるとキャッシュは減る?

名古屋の公認会計士・税理士の児島泰洋です。

今回のブログではキャッシュ・フロー計算書について解説させていただきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
目次
①キャッシュ・フロー計算書とは
②なぜ必要なのか
③キャッシュ・フロー計算書の作り方
④キャッシュの望ましい生み出し方・使い方
⑤クイズ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【①キャッシュ・フロー計算書とは】

キャッシュ・フロー計算書とは、その名の通り、お金の出入りを

「営業活動によるキャッシュ・フロー」
「投資活動によるキャッシュ・フロー」
「財務活動によるキャッシュ・フロー」

の三つに分けて計算したものです。

「営業活動によるキャッシュ・フロー」はいわゆる企業の本業によるお金の支払・入金のことをさします。メーカーであれば、原材料の調達による支払、製品の販売による入金などがこれにあたります。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は機械設備などの固定資産や有価証券などの購入・売却によるお金の支払・入金にあたります。

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は銀行からの借入または返済、株主からの資本の調達や配当などによるお金の支払・入金にあたります。

以下では、営業活動によるキャッシュ・フローにしぼって解説していきます。

また、キャッシュ・フローはC/Fと略します。

【②なぜ必要なのか】

キャッシュ・フロー計算書は今でこそ貸借対照表と損益計算書と同じく基本三表のうちの一つですが、以前はありませんでした。

なぜ必要になったかというと、損益計算書で計算される「利益」の金額と「キャッシュの増加額」があまりにかけ離れていて、利益が出ていてもキャッシュがなくて倒産してしまうという事例が多くあったからです。

損益計算書の利益が必ずしもキャッシュが増加することを意味しないのは、現金商売によるビジネスを除けば、掛けによる売り買いが行われるのが普通だからです。また、減価償却費のように費用なのにキャッシュの流出はないものもあります。

売上が増えていて利益も出ているのにお金がないという状態は珍しくありません。通常は仕入代金の支払の後に売上代金が入金されるため、売上が増加すればするほどお金は不足しがちとなり、最悪の場合、資金がショートして倒産なんてことも起きてしまいます。企業が倒産してしまっては取引先、銀行や株主も当然困ってしまいます。

ところが上記の理由で損益計算書で利益が出ているかどうかだけチェックしていても、企業が健全にお金を生み出せているのかどうかはわかりません。

そのため、営業活動でしっかりキャッシュを生み出せているか、生み出したキャッシュを将来の投資や借入金の返済・配当金の支払いなどに回せているかなどをチェックできる計算書が必要になったのです。

上場企業では2000年3月期から作成が義務づけられました。

【③キャッシュ・フロー計算書の作り方】

キャッシュ・フローはお金の出入りを総額で計算するのが自然な考え方です。つまり、「営業活動」であれば、売上によるキャッシュの受取額、仕入によるキャッシュの支払額を総額で計算します。これを「直接法」といいます。(総額法とはいいません。)

ところが、売上や仕入はたった1日でも何度も繰り返されるので、総額を計算するのは相当に手間です。そこで、「間接法」という方法が考え出されました。

間接法は税引前当期純利益をスタート地点として、現預金以外の流動資産や流動負債の増減などを足し引きして「営業活動によるキャッシュ・フロー」(損益計算書の利益に近い概念)を計算します。

もともと、利益とキャッシュの増減が一致しないことが原因であったわけですから、その違いを生み出す要因(掛けによる売買、現金支出を伴わない費用など)だけを調整してあげればよいだろうという考え方です。

損益計算書の利益は、売上があればあたかもキャッシュが増加した、仕入があればあたかもキャッシュが減少したかのように計算されますが、掛けによる売買であればキャッシュは動かないのです。そのため、売掛金の増加額は利益からマイナスし、買掛金の増加額は利益にプラスします。逆に、売掛金の減少額は利益にプラスし、買掛金の減少額は利益からマイナスします。

このように、間接法によるキャッシュ・フロー計算書では売掛金のような資産の増加はキャッシュのマイナスを意味し、買掛金のような負債の増加はキャッシュのプラスを意味します。逆に、資産の減少はキャッシュのプラス、負債の減少はキャッシュのマイナスを意味します。

つまり、キャッシュの観点からは、資産は減少させ、負債は増加させたほうがよいわけです。資金繰りに苦しい会社はきっと全く逆のこと(資産の増加と負債の減少)がおきているはずです。

④キャッシュの望ましい生み出し方・使い方

もちろん、キャッシュはただ増やせば良いというものではありません。投資活動(設備投資などの支出)にも回さなければ、将来にわたってキャッシュを生み出し続けることができません。

ちなみに、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを引いたものをフリー・キャッシュフローといいます。

フリー・キャッシュフローはその名の通り、自由に使えるお金のことです。借入金があればここから返済できますし、配当金の支払いにも使えます。借入金の返済や配当金の支払いは「財務活動によるキャッシュ・フロー」になります。

営業活動によるキャッシュ・フローの範囲内で投資活動を行い、さらに余ったキャッシュを使って借入金の支払などを行うのがひとつの望ましい形です。

キャッシュ・フロー計算書を作ってみると、自社がキャッシュをうまく回しながら経営できているかどうかが一目瞭然となります。

 

⑤クイズ

最後にクイズです。
現預金も資産だとすると、現預金の増加はキャッシュの減少でしょうか?
ぜひ考えてみてください。

JIM ACCOUNTING
代表 公認会計士・税理士 児島泰洋
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

お問い合わせは以下のフォームからも行うことができます。

財務諸表の分析で不正を発見することは可能か?不正シナリオをつくれ!

(※)過去のブログを再度アップしたものです。

以前、分析で財務諸表の異常を発見する方法について書かせていただきました。

分析で財務諸表の異常を発見することは可能か?

ここではもっと踏み込んで、財務諸表の分析で「不正」を発見する方法について考えてみましょう。

財務諸表の分析で不正を発見するための手順は、例えば、以下のようになります。

①分析の対象となる会社を知る

分析する前に、まず会社の業種業態・商慣行・組織の特徴などを知っておかなければなりません。分析の対象となる会社でどのような不正が起きうるか考えるためには、そのような情報が必要になるからです。

また、もしあれば、過去に起きた不正事例や、同業他社で起きた不正事例の収集も行います。

②不正シナリオをつくる

①で入手した情報をもとに分析対象となる会社で行われうる不正を検討します。この行われうる不正のことを「不正シナリオ」といいます。不正シナリオはひとつとは限らず何種類か同時につくります。

例えば、商社であれば、「循環取引」(※)という不正がよく行われますので、これを不正シナリオに加えます。

(※)循環取引とは、複数の会社(3社以上)が共謀して、同じ商品を延々と会社間で売買しつづける取引のことをいう。循環取引は資金繰りに困った会社や売上を大きく見せたい会社などで行われることが多い。この場合、商品は実際はほとんど動かないかそもそも存在せず、伝票だけの操作が行われるのですが、納品書や請求書もしっかり作られるため、発見はなかなか難しい。商社はもともと、仕入先の商品を直接、得意先に出荷するという直送取引をよく行いますので、循環取引はますます発見されにくくなります。

③財務諸表のどの科目でどのような変化が起きるかを検討する

不正シナリオができると、その不正によって財務諸表のどの科目あるいは財務指標にどのような「変化」ないし「傾向」があらわれるかを検討します。

さきほどの循環取引でいうと、例えば以下のような変化が現れます。

    • 売上が急に増える(それ以降は徐々に増える)
    • 粗利益率が徐々に悪くなる
    • 売掛金の回収期間が徐々に長くなる
    • 在庫の回転期間が徐々に長くなる

売上が急に増えるのは容易に想像できると思います。粗利益率が徐々に悪くなるのは、循環取引はそもそも利幅が大きくないですし、同じ商品が何度も売買されるうちに利幅は相対的に小さくなっていくからです。また、循環取引は資金繰りに困った会社が行うものですし、そもそも実体がない取引ですから、売掛金の回収までの期間が徐々に長くなっていきます。在庫についてもほぼ同様です。注意しなければならないのは、ただ単に売掛金が増えることとは全く違うことです。

このように不正シナリオに応じて、モニタリングすべき科目・財務指標を決めていきます。

④スコアリングモデルを設計する

分析対象となる会社が何十社もあったり、モニタリングする科目や財務指標がいつくもある場合は、③の条件にどの程度あてはまるかによってスコアをつけます。このスコアをつけるためのルールを定めたものがスコアリングモデルです。

例えば、売掛金の回収期間でしたら、前年(または前月)と比較して15%長くなっていたら5点、10%長くなっていたら3点、5%長くなっていたら1点といった具合にスコアを決めていきます。

スコアリングは結果を見ながら調整することもあります。

⑤財務諸表のデータを収集・分析し、スコア化する

財務諸表のデータを数年分、またできれば月ごとのデータを収集して分析にかけます。そして、④でつくったスコアリングモデルによって、会社の「不正度」をスコア化します。なお、これを行うためにはExcelを駆使するか、専用のソフトを使います。

以上が不正を発見するざっとした手順になります。

分析対象が少なければ、④と⑤までやらなくてもかまわないでしょう。また、不正シナリオも最初からより具体的に考えることができますし、データも詳細なデータを使用することができます。

分析対象が多い場合は、より粗い不正シナリオ、より粗いデータを使うことになりますので、⑤のスコアが高い会社に対象をしぼって、さらに詳細な分析を行うのがよいでしょう。

詳細な分析によって不正が行われている可能性が高い商品・部署・担当者までしぼりこむことができれば、その会社または部署だけを内部監査することによって、実際に不正が行われていないか内部監査することになります。

私は過去に上記のような仕事をしたことがありますが、とても骨の折れる仕事でした。①から③は比較的スムーズにいきましたが、④と⑤は何度もループしなければ最適解が見つからないので、とても時間がかかったことを記憶しています。

おかげで不正を「過去に起こしていた」会社を発見することができました。(依頼主はわざとそれを教えてくれませんでした。)

不正が気になる経営者の方がいらっしゃいましたら、是非ご相談ください。

JIM ACCOUNTING(児島泰洋公認会計士・税理士事務所)
代表 児島泰洋
電話: 090-1811-5461
メール: yasuhiro.kojima@jimaccounting.com

お問い合わせは以下のフォームからも行うことができます。